素人の言葉数が多い料理店

プロのようにディープじゃないけど、素人なりの楽しみ方がある。 「素人の言葉数が多い料理店」が、知ろうとするきっかけになれば。

「ヤバい方のパプリカ」を味わう

~素人ご愛嬌、ということで~

 

ヤバい方のパプリカ、でお馴染みの

筒井康隆氏の著書「パプリカ」に興味を持っている人も多いのではないでしょうか。

小説の帯ですね。ヤバくない方ありきなのがいい。

 

ちょっと変わったアニメや漫画好きのかただと、一度は目にしているタイトルだと思います。

ちょいディープが好き。ちょいグロっぽくて、人間の暗い原色の部分がテーマになってる作品がじつは好きなんだよねーって人。

僕もそういった作品に魅力を感じるひとりなので、今回向き合ってみることにしました。

正直長ーいこと触れないようにしていました。

レビューや感想をネタバレなしの状態でチラッと見ていた時にとにかく賞賛がすごくて。そんな作品を見てしまって「まだ見ぬ最高傑作」をひとつ失うことが怖くて距離をとっていました。

そう、僕は「好きな作品ほど最終回を見れない」という魔法に、ずっとかかっているのです。

終わってほしくない、終わらせたくない。

だからこそ、消化して昇華するための体力を持てる日を見極めて「パプリカ」探訪の旅に出ました。

 

【ネタバレなしのお話】

 

まずはじめに。

ヤバい方の「パプリカ」は原作小説とアニメ映画、漫画2種類があります。

 

パプリカ

パプリカ

  • 林原 めぐみ
Amazon

恐縮ながら漫画は存じ上げなかったため、今回は小説とアニメ映画についての話を進めていきたいと思います。

 

どっちから摂取するべきなんだ!?と迷ったのでアニメ映画のレビューの、ネタバレなしの部分を読みました。

「原作を読んだ方が楽しめるし理解できる」といった内容のレビューを読み、

一番美味しく味わいたい僕はまずは小説を購入しました。

 

 

通勤中に読んでいたのですが、これが非常に困りました。

どっぷりのめり込んでしまう世界観。没入しすぎて降車駅に気づけない。

筒井氏の文章を初めて体験しましたが技術や歴史、宗教や美術への知識が薄い状態でもじんわりと説明してくださり、しっかりと物語の中へ連れていってくださいました。なんで今まで筒井作品を読んでなかったんだろう。TV番組でおもしろいこというおじさんだな~で終わってたことを反省しました。

 

もう一つ困ったことが。

要所要所に出てくるお色気表現に、周りを気にしてハラハラしました。ここも筒井作品といえば、の部分だと噂には聞いておりましたが、早朝通勤電車とのエネルギーの不一致になんとも不思議なテンションで出社した次第でした。人の読んでいる本をチラッと見てしまう性分のため、よりドキドキしたところでした。

 

小説を読み終わった時には、うわーーー!と。声が出ました。

こんな何重にも味がする美味しい作品を、終わらせてしまったーーー!と駅のホームのベンチでしばらく座り込んでしまいました。終わった。終わってしまったと。

 

パプリカが魅力的な女性であることが感想としてよく語られますが、男性陣もパプリカに負けず劣らずとても魅力的な面々ばかりです。なにより登場する皆さんがとにかく魅力的。魅力的のゲシュタルト崩壊なほど魅力的です。

「いいなぁ…」「素敵だなぁ…」と思わず声にしてしまいそうな、そんなかたがたがいろんな事象に向かっていきます。

 

小説を読み終え、いよいよアニメ映画へ…と思いましたがここでまた心の問題が発生。

こんなに、こんなに濃い味の小説を表現しきってくれてるのか…?時間を見ると90分。本当に…?本当にこの小説を90分でおさめられているの…?怖い。怖すぎる。

 

でも僕は先人たちのレビューを信じた。

再生ボタンを押すことに決めた。

 

ありがとう先人たち。僕はアニメ映画「パプリカ」を堪能し、無事今日を迎えています。

 

率直に見終わってすぐの感想は「え!?なんで!?」。

原作をぎゅっとしてぎゅっとしてぎゅっっっっとしたのが本作品だった。ちょっと違うくないかしらそこ!となる部分もあった。もちろんそれだけではないと思う。時間の都合上だけではないと思う。

ちょみっと言うなら小説中で使用しているシステムツールがいくつかあり、問題が発生するのは②というツールだが映像作品では①というツールをそのまま②の機能も兼ね備えて~といったように、その他にもより進みやすくなるように様々なものが掛け合わされ、組み合わせられていた。

 

こういった面にう・・・と感じるかたもいるかもしれない。僕もよくそうなるタチだ。「原作どおり」こそが作品への愛とよく思ってしまうほうだ。

でもこの映像作品「パプリカ」は違っていた。原作と異なる部分への事情も、組み合わせがおこなわれた事情もわかっていない状態でも、作品へのリスペクトや思い、執念のようなものを感じた。

 

作品自体、ストーリーの疾走感や思いの動き、登場人物の色濃さや胸をぐわっと侵食するような演出など、心の知らない部分を触られる特殊な不安や快感を味わったと言えるくらいに、魅了された。

 

小説、アニメ映画と味わった後は充実と喪失が一緒に来た感覚で、居ても立っても居られず、僕はネット上の「パプリカ情報」を漁りにいった。

追いかけずにいられない。どうして?映画化の際に、どういう流れでこのストーリー展開になったの?知りたい。お願いどこかに載っていて。

 

載ってました。ありがとうWikipedia

 

どちらも堪能したかたはぜひ作品制作の経緯もご賞味いただきたい。なんとも歯がゆい中に、そうだったのか…そうだったのか…と表現できない心境を噛み締めることになります。小説と映画を見た後で大丈夫です。作品をとにかくそのまま純粋に味わってほしいから、前情報は入れなくて大丈夫。

 

★パン太郎的な「パプリカ」の味わい方

【小説】⇒【アニメ映画】⇒【映画制作エピソード】

 

この順番で美味しく味わえるんじゃないかな、と、僕は思いました。

まだ「パプリカ」を食べるか迷っているかたの勢いやきっかけになれたらいいな。

 

 

【ちょっとネタバレありのお話】

 

 

小説の能勢さんが好きだったんですよね。映画では粉川さんに吸収されていて、そっかそっか~と…大塚明夫さんの声は能勢さん、粉川さんどちらもぴったりだろうなと思っていたので、そこは見ていておお!と感動した点でした。

 

バーのお二人は言わずもがな。小説ではじつは二人の世界の中の話だったんじゃないかと思ってしまうような締めくくりで、現実ってなんだ!?と読み終わった後もほわほわしていたのですが、映画だとそのあたりが…好きなキャラクターゆえひいきに見てしまうんでしょうね。

 

小説でのパプリカや男性陣が連日夢で誰と誰がどうなっているのかもはや~~みたいな絡み合いになっている部分が単純に羨ましいと思いました。そういった状況が、というより…難しいところですが、とにかくいいなと純粋に思いました。

 

個人的に印象的な部分はやはり、映像作品の島寅太郎氏の発狂シーン。何度見ても鳥肌が立ちます。まだ寅太郎氏がどういった話し方をする人物か明確でない中、じんわりじんわりと例え話にしてはわかりづらい表現だな…?この例えは研究室内では通例なのかな…?が積み重なっていき、とうとう意図の理解できない言葉ばかりになって気づいた時には走り出し、平沢進氏の音楽が証明するかのようなタイミングで流れるあのシーンは、光輝く絶望への道に見えて…一生覚えていると思います。あんなにも怖いのに、明るくて何度も見たくなる、特別なシーンです。

 

筒井康隆作品の魅力に気付けたので、次回物語系の本を読む際は「残像に口紅を」を選んでみたいと思います。

 

 

あらすじを知った時に興味がわきました。好みがお察しですね。

う~楽しみ。